病気のお話
子どもはよく熱を出します。熱の原因として一番多いのは上気道炎(風邪)ですが、熱が長く続く場合は気管支炎・肺炎や中耳炎、いつもと様子が違う場合は尿路感染症、川崎病などの場合もあります。また、子どもはよくお腹を痛がります。必ずしもお腹に原因があるとは限りませんが、比較的多いのは急性胃腸炎です。何となく元気がない場合は腸重積症、右下腹部を強く痛がる場合は虫垂炎(盲腸)を考えなくてはいけません。
夜間にお子さんが熱を出しても、食欲もあり元気であればすぐに病院を受診する必要はありません。しかし、お母さんがお子さんの様子をみて「いつもと違う」、「何か変だ」と感じるときは病院を受診しましょう。
すぐに病院に連れていかなければならない赤ちゃんのサインを以下に示します。
- かん高い声で泣く、泣き止まない
- ぼんやり眠そうな状態と刺激に対し過敏な状態が交互にみられる
- けいれん
- 食べ物を2食続けてとらない
- 下痢や嘔吐(はくこと)をくり返す
- 呼吸が苦しそう、ぜいぜいする
- 肌の色が青白い
- あざが広がっている
- 40度以上の高熱がある
- 常に機嫌が悪い
◆上気道炎(風邪):
上気道炎とは、ウイルスや細菌(ばい菌)が鼻やのどで炎症を起こす病気であり、熱、咳、鼻水、のどの痛みなどの症状がみられます。原因の多くはライノウイルス、コロナウイルスなどのウイルスであり、細菌を退治する抗菌薬(抗生物質)は効きません。ただし、原因が溶血性連鎖球菌(溶連菌)などの細菌の場合は抗菌薬が効きます。上気道炎の患者に抗菌薬を投与しすぎると下痢を起こしたり、耐性菌という抗菌薬の効かない菌を増やしてしまいます。よって抗菌薬は注意して使用することが大事です。
◆気管支炎・肺炎:
気管支炎・肺炎とはウイルスや細菌(ばい菌)が気管支や肺に入り炎症が起こる病気です。風邪に引き続き起こることが多く、長引く熱、咳、ぜいぜいなどの症状がみられます。原因となるウイルスにはインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、細菌にはインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別のもの)、肺炎球菌、マイコプラズマなどがあります。ウイルスに対しては咳止めや痰きりなど症状をやわらげる治療を行いますが、細菌に対しては抗菌薬(抗生物質)を使用します。飲み薬でよくならない、呼吸が苦しい、年齢が小さい、もともと病気を持っている、食欲がないなどの場合は入院して治療を行います。
◆中耳炎:
中耳炎とは、鼓膜の奥の中耳に細菌(ばい菌)が入り、炎症が起こる病気です。風邪が原因で起こることが多く、長引く熱、不機嫌、耳を痛がる・触るなどの症状が見られます。原因としてインフルエンザ菌や肺炎球菌などが多く、治療として抗菌薬を飲みます。完全に治さないと再発したり、滲出性中耳炎(鼓膜の奥に水がたまる病気)を起こし、難聴になることがあるため注意が必要です。
◆尿路感染症:
おしっこをつくる臓器を腎臓、ためる臓器を膀胱、流す管を尿管、尿道といい、これらを合わせて尿路と呼びます。尿路感染症は細菌(ばい菌)やウイルスが尿路で炎症を起こす病気です。1歳未満では男の子に多く、1歳以降では女の子に多くみられます。熱、ミルクの飲みが悪い、腹痛(赤ちゃんの場合不機嫌)、嘔吐(吐くこと)などの症状がみられます。原因は大腸菌など腸にいる菌のことが多く、おちんちんを不潔にしたり、おまたを後ろから前に拭いたり、厳格なトイレトレーニングは尿路感染症のきっかけになります。お子さんが小さい場合や具合が悪い場合は入院して抗菌薬(抗生物質)による治療を行います。
◆川崎病:
小児科医の川崎富作先生がこの病気を発見したため、川崎病という名前がついています。原因は不明ですが、4歳以下のお子さんに多い病気で、①熱、②目の充血、③唇の赤み、④首のリンパ腺の腫れ、⑤手足の赤み、むくみ、⑥体のボツボツがみられます。6つの症状のうち5つ以上そろった人を川崎病と診断します。病気の本態は目や皮膚などの細い血管の炎症であり、冠動脈という心臓の血管が炎症を起こすと、子どもでも心筋梗塞になることがあります。そのような合併症を起こさないために、早く診断して入院治療を行うことが重要です。
◆急性胃腸炎:
急性胃腸炎とはウイルスや細菌(ばい菌)が胃腸で炎症を起こす病気であり、嘔吐(吐くこと)や下痢がみられることから嘔吐下痢症とも呼ばれます。他の症状として熱、腹痛、血液混じりのうんちを認めることもあります。原因にはロタウイルス、ノロウイルスなどのウイルス性と病原性大腸菌やサルモネラ菌などの細菌(ばい菌)性があり、後者は食中毒、ペットなどにより感染します。子どもは頻回の嘔吐、下痢により脱水を起こしやすく、適切な水分補給、食事療法が必要になります。来院されたお子さんには治療法を具体的にお教えします。